Method Studiosが今年のスーパーボウルのTV中継用に制作したKia社のスポットの中で、男の子が父親に、「赤ちゃんはどこから来るの?」というお決まりの質問をする。Method Studiosは、その答えを壮大なCGプロジェクトの中で表現し、Houdiniを使って、雲や水、動物の毛、煙、火といったさまざまなビジュアルエフェクトの要素をスポットに盛り込むことに成功した。

このスポットでは、ふわふわの毛に覆われたたくさんの赤ちゃんキャラクタが、動物界のあちらこちらから現れ、ベイビーランディアという生まれ故郷の惑星から、宇宙船に乗って地球上の新しい両親のもとへとやって来る。このプロジェクトには多くのキャラクタ、何百ものシェーダ、何千というオブジェクト、1,662のテクスチャが費やされた。柔軟性と作業時間の短縮が鍵となったが、Houdiniをパイプラインで使用することで、非常に幅広いアセットを問題なく扱うことができた。

 

Houdiniを用いたMethod Studiosのパイプライン

Houdiniにより、異なる3Dアプリケーションで生成されたCGエレメントによるモジュール式のアセットを、Method Studiosはスポットのいたるところに投入することが出来た。Houdiniのプロシージャルな特性のおかげで、アーティストはぎりぎりまで細部にわたってフレキシブルに手を加えることができ、過剰な差し戻しをすることなく作業を進めることが可能になった。

「HoudiniのアーキテクチャとAlembicとの連携により、堅牢なパイプラインを面倒な作業なく構築することができ、チーム全体で情報を管理・共有ができました。」CGスーパーバイザのブライアン・バーク氏は言う。「シーンの複雑さの制御や管理も問題も混乱もなく行うことができました。」

 

Houdiniのファーツール

このプロジェクトには、ふわふわした毛で覆われた、さまざまなかわいらしい生き物が登場する。プロジェクトが大規模なものであったため、1人1人のアーティストが作り出さなければならない毛の種類も広範囲にわたった。

この準備段階jにおいて、Houdiniのファーツールを使い、作業時間短縮を図る‘グルーミング(毛繕い)’ネットワークのテンプレートを作成、アーティストたちがすぐに作業に取りかかれるようにした。そして、その‘グルーミング’ネットワークを使って、それぞれの動物の個々に異なる毛皮が作り出された。

「最終的な毛並みのバージョンをパブリッシュすることに加え、ワイヤーシミュレーションを用いたファーダイナミクスもパブリッシュするシステムも追加しました」、Method Studiosのテクニカルディレクタ兼ライティングアーティストであるコリン・デオルセー氏は言う。「これにより、あらゆるアセットをきちんと整理し、同じように管理しておくことができ、グルーミングの作業時間とショットごとのファーシミュレーション時間を劇的に短縮できました。」

 

Pyro FX

ロケット発射のシーケンスの制作にあたっては、ロケット一つに対してプロシージャルな設定を行って、軌跡のカーブを作成、ボリュームコンテナをアラインするパスとして指定した。そのうえで、シミュレーションファームにロケットを押し込み、ものの数分で必要な数だけのロケットの軌跡を作成することができた。

「ロケット発射のショットでは、HoudiniのPyro FXソルバの力をフル活用しました。」主任エフェクトアーティストのジョナサン・ボーン氏は言う。「ヒーローシミュレーションを数回行ってからインスタンス化することで、より高密度なエフェクトを実現できました。ロケットの軌跡や打上げ時に出る煙については、HoudiniのPyro Fxのクラスタリング技術を使って表現しました。」

 

雲のショットを開発するための、初期形状の設定と定義にはメタボールが用いられた。その後の作業工程において、雲はCVEXでサンプリングされ、ノイズパターンを加えて雲の形に形成された。このプロセスで、ビューポート表示をより精密にしたい場合、アーティストは、低解像度のCVEXボリュームから高サンプリングすることも出来るようにした。

「こうした設定によって、シーンを軽くしつつ、Mantraでボリュームの細部にわたるレンダリングを行うことができました。」主任エフェクトアーティストのトーマス・ザベッカス氏は言う。

 

Houdiniの柔軟なワークフローにより、Method Studiosは、プロジェクトのニーズに合ったカスタムの水面デフォーマをほんの数日で開発することができた。デフォメーションテクニックの無限に組み合わせが可能なVEXオペレータ (VOPs)と、コンパイルされたVEXによる高速処理によって、プラグインを書かずに、必要に応じて他のソフトウェアパッケージと連携させながら、メッシュデフォメーションシステムのプロトタイプの作成を迅速に行えた。

「Houdini上にダイレクトにツールを構築することにより、すぐにフィードバックを得ることができ、外部プラグインを開発するよりはるかに速く問題を診断することができました。」主任エフェクトアーティストのチャールズ・トリップ氏は説明する。

 

Mantra>のフィジカルベースレンダリング (PBR)

Kia社のSpace Babiesは、Method Studiosが全面的にフィジカルベースレンダリング(PBR)用いてレンダリングを行った最初の大きなプロジェクトだ。過去のプロジェクトにおいて、とりわけファーやボリュームのレンダリングを伴うプロジェクトでは、シーンによっては、レイトレースエンジンを使用した従来のレンダリング手法で、大量の複雑なジオメトリを処理しなければならなかった。

映画“ライトスタッフ”のヒーローショットを彷彿とさせる260フレームのショットでは、CGで作られた動物たちと、一緒に並んで歩く実写の赤ちゃんのスーツがぴったりと合わせる必要があった。キャラクタ間で相互反射するディフューズ(拡散)ライトにより、リアルさが向上した。さらにライティングチームは、光の物理的減衰をシミュレートするエリアライトとHDRテクスチャライトマップを用いたり、ジオメトリにHDR画像をプロジェクションマッピングしたりすることで、極限までリアルなライティングを実現した。

「PBRによるグローバルイルミネーションは、実写エレメントのライティングとつり合いをとり、照明のリアルな相互作用を生み出すうえで、極めて重要でした。」エフェクトアーティストのネイト・ショー氏は言う。

PBRのボリュームレンダリングは、宇宙船からの排気の複雑な表現や、グローバルイルミネーションやマルチスキャタリングによる幻想的なレンダリングを実現する上でも不可欠であった。こうしたすべての要素が相まって、ベイビーランディアの‘ソフトな’雰囲気を作り上げた。

以前であれば、こうした複雑なボリューメトリックエフェクトは、近似値を基にしたポイントクラウド法か単純な影の無いライトによって作成されただろう。PBRを用いてこうしたエフェクトを的確に表現することでもたらされる繊細なリアリズムは、ボリューメトリックエフェクトのすべてに深みを持たせる結果に繋がった。

ビジュアルエフェクトスーパーバイザーのアンディ・ボイド氏は次のようにしめくくる。「Space Babiesは、多くの制約があったにも関わらず、非常に完成度の高い作品になりました。これは、各チームの密接な連携によるものだと考えます。皆が大仕事をやり遂げてくれました。Houdiniで大量のデータを容易に扱うことができたおかげで、アーティストは複雑なシーンも芸術性を意識しながら作業を進めることができたのです。」