ゲーム開発会社はここ数年、気が付いてみれば、熱狂的なゲームプレーヤーの期待に応えるために、より広い世界を構築するようになってきている。こうしたコンテンツへの欲求を満たすために、多くの開発会社が、大勢のモデラを雇わずとも、ゲームコンテンツの開発時間を短縮する策を模索している。オランダにあるNHTV応用科学大学のIGADプログラムで教鞭をとるキム・グーセンス(Kim Goossens)氏は、ゲーム開発のためのプロシージャルなモデリング技術を提唱し、この課題に対するHoudiniの活用方を学生たちに指導している。



簡単な自己紹介と、この業界での経歴を教えて頂けますか? これまでのキャリアにおける主な専門分野と、またそこでのHoudiniの役割についてもお聞かせ下さい。

私は、アートディレクターまたテクニカルアーティストとして、CG業界でCMやゲームの制作に23年間携ってきました。その間常に、アートと効率性をできる限り結びつけることに注力してきました。Houdiniとの出会いは2004年、少人数でスケールの大きなゲームを開発しなければならず、アートディレクターとして頭を悩ませていた時で、それ以来すっかり魅了されています。

そのゲームは結果的に開発中止になってしまったのですが、プロシージャル方式を元にしたレベルデザインがプロジェクト上実現可能かを確認するためのテストケースを作成しました。構築したテスト例の一つである道路構築ツールは、Houdiniが持つゲーム開発についての非常に大きな可能性に気づかせてくれました。Houdiniを使った方法は、ゲーム開発における重要な要素になるのではないかとある時点で感じ、このツールを使って自分自身の技術向上を図りたいと思ったのです。開発中止の直後、私はIGAD(International Game Architecture and Design)でのポストを引き受け、ゲーム開発のためのプロシージャルモデリングコースを開設する運びとなりました。



現在教えていらっしゃるゲーム開発のためのプロシージャルモデリングコースについて、講座期間やどのように受講できるのかなど、詳細をお聞かせ下さい。

私たちの学校はゲームデザインの専門学校で、ビジュアルアーツ、プログラミング、ゲームデザインの3つの専科から成り立っています。ゲーム実習の授業では3つの専科が集まり、少人数のチームに分かれて、ゲームをゼロからデザインする課題に取り組みます。こうして、学生たちはチームによるゲーム開発の力学や問題を直接体験するのです。

Houdiniは、学士課程の3年目、学生たちが従来のモデリング技術を用いたゲーム構築について経験した後に学びます。こうすることで、学生たちは制作のボトルネックについて体験的に理解しているので、プロシージャル手法の価値をより正しく理解できるのです。プロシージャルモデリングコースの講座期間は半年間で、ゲーム開発におけるプロダクションのボトルネックを発見することに重点を置いています。問題点を見つけ出したら、その課題について徹底的に研究するよう求められ、分析の後、課題の抽象化がなされるのです。取り上げられる課題は、背景、建物、乗り物、キャラクタなどに関連したものです。

授業では、ジオメトリの配置や形状が元のジオメトリ構造に依存する相関モデリングに重点的に取り組みます。また、講座期間中は見た目に時間を大きく割かないよう配慮しています。学生たちが、ビジュアル的に優れたものに後々グレードアップ可能な、柔軟性の高いデジタルアセットを開発できるようになることを目標にしており、そういった意味で、構造を理解することが重要になるのです。

コースが修了すると、学生たちは各自専門分野を決め、1学年をかけて卒業課題に取り組みますが、それぞれのスキルを業界標準レベルにまで高めた課題開発が求められます。厳しい内容ではありますが、卒業年次の学生に人気のあるコースです。

プログラムへの参加希望者は選考過程を通過し、入学を認められなければならないうえ、基礎課程を修了しなければプログラムに残ることはできません。



Houdiniをゲーム開発のパイプラインに使用した場合、主にどのようなメリットがあるとお考えですか?プロシージャルなアプローチがゲーム開発者にもたらす利点と、Houdiniの効果的な活用法について教えて下さい。

Houdiniは、ゲーム開発における3つの分野で優れたツールとして活用できると考えています。Houdiniは、骨が折れる繰り返し作業を行う際に非常に高い効果を発揮します。多人数参加型のオンラインロールプレイングゲーム(MMORPG)では、多数のバリエーションと細かいディテールを必要とする世界に何千ものキャラクタが登場します。Houdiniは、何百、何千といったオブジェクトを配置するレベルデザインにおいて、カスタムのプロシージャル配置メソッドを作成するこれ以上ないツールです。ハイレベルなブラシを使い、植物の“プロシージャルな”配置ができるツールは他にも存在します。しかし、Houdiniがオブジェクトの配置に影響を与える環境アトリビュートを数多く生成可能であるのに比べ、こうしたツールはまだ非常に限定的なものです。

Houdiniに搭載されているような高度なツールを独自エンジン内に作成しようとすると、ゲーム会社は多くのリソースを費やさなければなりません。今後、破壊表現を取り入れたゲームはますます増加し、背景もより細部にわたる傾向にあります。人物(あるいは宇宙人)の形状化には、内部にいたるまで多くの要素が必要となります。損傷や破壊をリアルに表現するためには、それらの“臓器”まで作りあげるような、細部にわたる表現がますます重要になっていくでしょう。ゆくゆくは、こうした複雑性を実現するために、プロシージャルモデリングは不可欠なものになると思います。

ゲームエンジンそのものに組み込むタイプのプロシージャルシステムもあります。これは主に、プレーヤー自身がゲーム世界をデザインしたり、プレーヤーの動きに合わせて背景が変化したりするゲーム用のものです。こうしたプロシージャのデザインは、テクニカルアーティストが多くのバリエーションを作成しなければならない難しい作業です。Houdiniは、こうしたプロトタイピングを迅速に行うために最適なツールです。

Houdiniが非常に有効だと考える3つ目の分野は、要素のデザインプロセスです。Alchemyは、2次元の形状やパターン作成するうえで、創造力を刺激してくれるシステムです。Xyanide(私がアートディレクターを務めたXboxのタイトル)のレベルデザインにあたっては、膨大な世界を構築しなければならず、様々な趣のある回廊や空間を数多くデザインする必要がありました。

このようなデザイン作業は、創造力の壁にぶち当たるまではうまくいくものです。私は、箱などの単純な形状をランダムに作成してデザインを模索し、趣のある空間構成を“見出す”という作業を行っていました。しかしこの方法では、作成した形状が、空間の構成要素となるもの以外の、その他多くのオブジェクトに見えてきてしまう場合があります。このアプローチにおける最大の問題は、アーティスト自身がアートディレクターの役割を果たさなければならないということです。つまり、予期しなかった方向で、プロシージャの“いたずら書き”に想像力を掻き立てられてしまう可能性があるのです。

おそらくHoudiniの最大の強みは、ゲーム会社の規模にかかわらず、様々な作業が並行して行われるプロダクションパイプラインを完璧に管理できるという点で、これは他のツールでは不可能でしょう。

これらは学生たちが発見したことでもあります。学生の一人であるフリーク・フックストラがHoudiniを専門的に学び始めたのは、彼が作ってみたかった本来はプロのプログラマしか作成できないようなツールを、Houdiniで作ることができるという理由からです。Houdiniはユニークな機能を搭載し、他のプロシージャルプログラムにはない高い汎用性を有しています。

彼はHoudiniを使い、無事に新しい一歩を踏み出しています。卒業課題をアップロードしてわずか数時間で多くの仕事の依頼を受け、フォーラムには好意的な反応が数多く寄せられています。彼のデモはツイッターや企業の内部メールで広がったようで、プロシージャルモデリングの可能性を示すものとして、いくつかの記事や講義で使用される予定です。



プロシージャルモデリングの授業の中で、Houdiniと特定ゲームエンジンのインタラクションは行われますか?その場合、どのゲームエンジンとどのようにインタラクションするのですか?

つい最近、ゲームエンジンとのインタラクションを設定したのですが、卒業生であるジャン・ビーバーズとともに、HoudiniとUnreal Development Kit (UDK)の接続設定を行いました。

Houdiniを応用したゲーム開発を専攻した第一期生は無事卒業し、その卒業課題は国際的に注目を集めました。ゲーム実習では今後より一層Houdiniの活用を奨め、ゲーム開発におけるHoudiniの使用を推進したいと考えています。

ゲーム開発のためのプロシージャルモデリングコースを修了した学生たちは、どのような進路に進まれていますか?

学生たちの進路はかなり多岐にわたっていますが、Guerrilla Gamesとは、Houdiniがそのゲームの開発環境で使われて以来、良いつながりを持っています。一般的に、Houdiniに関しての技術的知識が豊富であることを示すことができれば、デジタルメディアを深く理解していることになりますから、就職しやすくなると考えています。また、Houdiniを使える人材はゲーム会社の需要も高まっており、4年前にHoudiniコースをスタートして以来、こうした状況を非常に喜ばしく思っています。