Psyopのクリエイティブ・ディレクタを務めるエベン・メアーズ氏とアン・ブ氏は、クライアントであるJBL社製スピーカーの持つパワーを象徴的に表現するために、竜巻の威力と破壊力を描写するデジタル映像を制作した。

この嵐をよりリアルに表現するために、制作チームは、膨大なデータベースを管理し、クライアントの期待に応えるうえで効果的なカスタム・ツールを作成する必要があった。そこで、Houdiniのノードベースのプロシージャルワークフローを採用し、プロジェクトのあらゆる局面を乗り切ることにした。

7000万個のパーティクルを使った竜巻

45秒間のスポットでは、まず、暗く、変化の激しい空に漏斗雲が現れる。それは瞬く間に巨大な竜巻へと発達し、進路上にある物をかたっぱしから破壊していく。クライマックスでは、大量の損壊物が巻き上げられ、ぶつかり合うのを、竜巻の目の内側から映し出す。実は、よく見ると、損壊物の多くは時代遅れの家庭用音響機器だ。

HoudiniのポイントクラウドのパーティクルオペレータとPyro FXを併用し、制作チームは周辺の物を巻き込みながら進んでいく竜巻をリアルに表現した。

竜巻の初期設定が完了すると、作成されたネットワークノードは、そのままデジタル・アセットとして繰り返し活用された。このアセットにより、表層だけのユーザインターフェースと単一アセットノードのみで、竜巻のパラメータの変更が簡単に行えるようになった。この“竜巻”ツールは制作過程を通して利用され、今後も嵐を扱うプロジェクトで使用できるように保管されている。

「竜巻ツールを使って、竜巻の要素や全体的な動きのスケール、デフォーム、アニメーションの補正などが非常に簡単に行えました。」Psyopのテクニカル・ディレクタであるミゲル・サレク氏は言う。「修正箇所の変更も、ものの数分でできてしまいました。」

竜巻の中でAV機器やその他の損壊物が吹き飛んでいく表現には、大量のデータ処理が求められた。膨大なデータセットを効率的に処理するHoudiniの機能により、こうしたこともアーティストにとって大きな問題にならずにすんだ。「生成されたパーティクルの総数はおよそ7000万個―この事実が全てを物語っています。」ミゲルはそう話す。

Alembicベースのパイプライン

Alembicは、パイプラインの相互運用を簡略化するオープンソースのデータ交換フォーマットだ。HoudiniがAlembicをサポートしたことで、竜巻やそれにまつわる膨大なデータをエクスポートし、Arnold Rendererを使ってSoftimageで簡単にレンダリングできるようになった。

HoudiniとそのAlembicへのエクスポート機能により、Psyopは自然の破壊力を表現し得るようになったうえ、新たな竜巻の制作にも備え準備も万端といったところだ。