httyd2_main.jpg

CGアーティストが作業成果をあげるためには、柔軟な作業環境の実現や、データ転送ツールを用いたチーム間でのスムーズなデータ共有、また、複雑なコードを書かなくても他のパイプラインツールに素早くアクセスできることが必要だ。

ドリームワークス・アニメーションでは、Houdiniがパイプラインフレームワークとして使用され、才能あるVFXアーティストに流体、炎、煙、破壊エフェクトを作成するためのツールを提供している。映画 『ヒックとドラゴン-2』では、Houdiniがドリームワークスのスタジオパイプラインに密接に統合されたことにより、目覚ましい成果を収めた。

 

Houdiniデジタルアセット

Houdiniで作成されたVFXツールは、異なるチームのアーティスト間で Houdini デジタルアセット (HDA) 形式で共有され、ツールや技術の再利用が一から作り直さなくても可能だ。

「Houdiniデジタルアセットは、多数の細かなパーツや構成要素を一まとめにカプセル化しツールとして使うことができる、開発者にとって素晴らしい方法です。」ドリームワークス・アニメーションでFXチーム共同リーダーを務めるスコット・ピーターソン氏は言う。「このツールには、独自のインターフェースが搭載され、アーティストにクリエイティブプロセスを推し進めることが出来るコントロールを提供できます。」

多様な構成要素をつなげることで、ノードネットワークの複雑な下層部分を見なくても、複雑な一連の手順を設定し実行することができる。 ドリームワークス・アニメーションでは、アーティストと開発者が、数百ものデジタルアセットを構築してきており、スタジオにおける様々なVFXに活用している。 『ヒックとドラゴン-2』で最も汎用的に使用されたHDAは、シミュレーション時にキャラクタを簡単な衝突モデルに変換するものであった。

「キャラクタ志向の強いプロジェクトにおいて、Houdiniが他のツールと上手く動作することが極めて重要でした。ドリームワークス・アニメーションのパイプラインでは、サードパーティ製のものから私たちが独自開発したものまで、多種多様なソフトウェアパッケージを使用しています。」ピーターソン氏は言う。 「Houdiniは我々のパイプラインに良く統合され、アニメーションされた形状、大規模セット、カメラを読み込むことが可能です。これは、シミュレーション、形状操作、そしてレンダリングやバッチ処理の起動などすべてを単一の環境で行うことが出来るプラットフォームで、我々の映画における複雑な特殊効果を作成する作業の簡易化が図れます。」

VFXショットの中でも難易度が高かったのものは、水と氷に関するもので、特に流体から固体の氷への変異や、流体とキャラクタが相互に影響を及ぼす表現などであった。 ドリームワークス・アニメーションの研究開発部門は、FLUXという当スタジオが開発しアカデミー科学技術部門賞を受賞した流体およびガスソルバをHoudiniの環境内で使用し、複雑な特殊効果を作成した。 水と氷はこの映画の重要なテーマで、それは火ではなく氷を吐く新しいタイプのドラゴンたちが登場するためである。

 

流体を元にしたVFXの制作

この映画の中でも最も重い水を元にしたシーケンスの一つは、巨大なBewilderbeastドラゴンが、巨大な水しぶきとうねる波とともに海から不気味に登場する場面であった。 「ビジュアルの細かさがこのドラゴンのスケール感を伝える必要があり、配置された部品や波のしぶきと干渉を表現するには、莫大な量のデータを生成する高解像度のシミュレーションが必要でした。」ドリームワークス・アニメーションのFXアーティスト、ローレンス・リー氏は言います。 「このためには、高速に大規模データ上で繰り返し操作が出来、見た目に素晴らしい液体シミュレーションを結果を得られるようになることが重要でした。」

ドリームワークスのFXアーティストであるバプティスト・ヴァン・オプスタル氏がこれらのシーケンスの開発を率いた。「キャラクタアニメータと緊密に作業し、各シーケンスのすべてのショットを一つの途切れのないアクションとしてカバーした低解像度のシミュレーション設定を作成しました。大量のリソースを必要とする高解像度のシミュレーションとレンダリングに取り掛かる前に、波の全体的なアクションに対してまず監督から承認を得ました」とヴァン・オプスタル氏は説明します。

 

beast_water.jpg

 

全体的なアクションに承認が出た後、ヴァン・オプスタル氏は各ショットのシミュレーションの解像度を上げることに集中しました。 低解像度シミュレーションをインプットとして使うことで、承認が出た水の動きは保持されつつ、高解像度シミュレーションはそれぞれのショットのカメラに応じて分割されました。 高解像度シミュレーションデータはその後、カメラビュー内にあるパーティクルのみが最終レンダリング用のディテールの高い水面としてメッシュ化されるよう、フレーム単位で最適化されました。

シミュレーションデータはそれから、泡や霞や白波など追加表現要素のために小さな領域に再分割され、高速に生成できるよう、巨大なデータセットは (2億パーティクルの幅で)、並列的に処理された。 最終データは再結合され、継ぎ目のない最終画像がレンダリングされた。 プロシージャルに設定が行われたことで、最高の結果を出すために再分割の方法を素早く調整し、最適なパラメータを探し出すことを可能にした。

 

beast_water3.png

 

「Houdiniを使ったことで、これらの効果の設定に対し、驚異的なコントロールを得ることが出来ました。プロシージャの深部に入り込み、必要なところに変更を加え、結果を瞬時に得ることが可能です」とヴァン・オプスタル氏。

 

水から氷へ

Bewilderbeastドラゴンは口から大量の水のを噴出し、そして水をその冷たい息によって凍らせる。 水が凍ると、ギザギザとした荒々しい氷のスパイクと化し、その方向にある物体を破壊したり氷漬けにしたりする。 「Bewilderbeast ドラゴンの氷の噴出とキャラクタや環境との相互作用のため、この効果を作成するためのリグは、アーティスティックなコントロールを十分に提供するのと同時に、この効果が物理的にももっともらしく見えるようになるようになっている必要がありました」とリー氏は説明している。 「Houdiniがもともとプロシージャルに動作することとシミュレーション環境に密接に統合されていることはこういった要素に対して非常にうまく働きました」

 

iceblast.png

 

流体を元にしたVFXの制作アプローチと同様に、ドリームワークス・アニメーションのFXアーティスト、ルーカス・ジャナン氏は、リソースをコミットして最終レンダリングを実行する前に、各ショットを分割する方法を編み出した。 「いつもシミュレーションを実行する際には、細部の調整や変更箇所の迅速な確認が行えるように、まず低解像度で行います」ジャナン氏は言う。

この氷の噴出は2つに分割された。ドラゴンの口からの噴出がターゲットエリアにぶつかるまで、そしてそれにより氷のスパイクが発生するところ。 噴出の殆どはパーティクルシミュレーションにより生成された。 氷のスパイクの全体的な形と生成スピードは、噴出パーティクルの速度とコリジョンサーフェスの法線によってプロシージャルにコントロールされた。 Houdini にプロシージャルな設定を組み込んだことで、ジャナン氏は、成長するスパイクのサイズと速度に対し、インタラクティブな操作スピードと完全なマニュアルコントロールの両方を得ることが出来、ディレクタからの要求を素早くこなすことが出来た。

「全体的な形に対し承認が下りたら、プロシージャル・スパイクをフォースとして使ったFLIP シミュレーションを実行しました。さらにもう一つのレベルのジオメトリデフォメーションを適用して氷スパイク上に突起を生成、さらに視覚的なディテールとスケール感を追加しました。最後に氷の塊、雪の粒、冷たいもやなどをレイヤーとして追加してこのエフェクトを完成させました」とジャナン氏は説明した。

プロシージャルワークフローと物理的なシミュレーションを組み合わせることにより、凍る水のリアルな質感を保ちながら、大きなアーティスティックなコントロールを提供できた。

 

iceblast.jpg

 

火を元にしたVFXの制作

映画『ヒックとドラゴン』の一作目同様、炎はこの映画の重要な要素である。 ドラゴンの息は別として、炎は主人公ヒックのドラゴンブレードの一部でもあり、ストーリーの鍵となる隠された物を照らし出す重要な役割をはたす。

このブレードは、最初にmonstrous nightmare ドラゴンの唾液からの燃料でコートされる。 ボタンをクリックしてスパークを起こし火をつける。 結果の炎は燃焼するナパームの性質を思い起こさせる。 視覚的には、アートディレクションとして、ヒックがブレードを振り回すたびに長い弧を描く炎が想起された。しかしながら、このような美しい弧を物理的シミュレーションだけで達成するのは非常に困難だ。

 

hiccup_fire.png

 

「ヒックの剣については、Houdini 内のOpenVDBはもちろんのこと、FLUXも使い、炎のシミュレーションを行いました。」ドリームワークス・アニメーションのFXアーティスト、ジェームス・ジャクソン氏は言う。

ジャクソン氏は、発火位置から開始フレームと動くブレードのパスに沿って炎の長さをコントロールできるプロシージャを作成した。 カーディナルカーブを使用してブレードの位置をフレーム単位で滑らかな弧にブレンドし、モーションブラーをシミュレーションした。 「この方法は、高速で動くソースとガスシミュレーションの併用時に頻発するちらつきを除去するのに効果的でした。この設定で、弧の上に、写実的な炎の効果を作るためのベースと多くのアーティスティックなコントロールを搭載できます。」とジャクソン氏は説明した。

破壊

ドリームワークス・アニメーションのFXリードアーティスト、ジェイソン・メイヤー氏は、 “奇襲”と呼ばれたシーケンスの爆発や破壊エフェクトの大部分を手掛けた。このシーケンスは、巨大なBewilderbeastの凍てつくような息によってできた大きな氷のスパイクを破壊する6つの大規模な破壊ショットから構成された。 こうした氷山は“ドラゴンマウンテン”と呼ばれる地を形成し、そこは、ヴァルカ(ヒックの母親)と彼女とともに暮らす自由なドラゴンたちにとって安住の地となっていた。 適役であるDrago Bludvist は、ヒックやドラゴンたちをBewilderbeastをおびき出すためにこの山を砲撃した。

“奇襲”シーケンスの中ごろに、ヒックたちが氷のスパイクに着弾して爆発する砲弾をかわす場面が繰り広げられる3つのショットがある。 これにより氷は粉々に割れて崩壊する。大きな氷の塊がヒックたちにぶつかりそうになったちょうどその時、ヒックのドラゴン、トゥースが口から炎を噴きそれを粉砕する。 これらのショットでは、爆破や破壊の表現が画面の約75%を占める。

 

desctruction.jpg

 

メイヤー氏のとった、破壊VFXのためのジオメトリを破砕する手法は、極めて計画的かつ周到的なものだった。

「まず初めに行ったことは、簡単なアニマティックを設営し、破壊のきっかけとなるタイミングを算出することにしました。この場合、砲弾の爆発の規模とどのフレームでこれらのオブジェクトが氷に着弾するかです。」メイヤー氏は言う。 「次に、強調したい破壊に伴う動きを視覚化してみました。亀裂の広がっていく様子や、砕けた氷の欠片が回転しながら落ちていく様子などについてです。」

次に、ジオメトリをクリーンアップし、ボロノイ破砕でモデルを「荒く」切断する。 これは、動かす必要のないものを分離して、動くパーツに集中するためだ。 その後、主要なパーツをより小さなパーツに再破砕した。

「私の経験則として、立て続けに起こる破壊の比率を1:1.6に保つことで、これは絵画、建築、デザインなどに見られる黄金比におおかた即した比率を大体の目安と考えています。」メイヤー氏は言う。 「この方法によるパーツの分布が気に入っていて、大きなパーツと小さなパーツのまとまりを並べて作業を進めることができます。シミュレーション時には、コンストレインやグルーを使わずに、オーバーヘッドを抑えながら、大きなパーツの崩壊の様子を得ることが出来ます。この方法によって、パーツ数を制限することで、データ量やシミュレーションのフットプリントを低減することができました。よって、規模の大きな破壊ショットでもオブジェクト数を1,000以下にできるのです。これらのショットのでは、若干改良したHoudiniのボロノイ破砕デジタルアセットを使用し、エッジにノイズをかけました。」

パーツ数が抑えられたことにより、ボリュームベースのダイナミックオペレータ(DOP)やリジッドボディダイナミクス(RBD)シミュレーションを使用することができた。 このボリュームを元にした方法は、SDFの解像度の調整によって生成されるコリジョンオブジェクトの角の丸みのコントロールを可能にした。 丸みのある角によって、かけらがより自然に転がり、予想通りの跳ね返りをするようになった。

メイヤー氏は、ショット内の破壊の全体的なルックを増幅するためにいくつかの仕掛けを使った。 瓦礫などにパーティクルエミッタを配置し、破片が分離した際に明確なシルエットを強調した。 さらに、チリ、ほこり、たなびきのレイヤーをいくつかの瓦礫に加え、視覚的な複雑さを追加した。

「これらのシミュレーションは、油絵を描く際に薄いつやを何度も何度も加えて磨きをかけるのと同じように、レイヤーとして追加されています」とメイヤー氏。 「ディレクションを多用するショットでは、これより良いワークフローは思いつきません。」

 

hiccup_film.jpg

 

作業をプロシージャルに

スコット・ピーターソン氏は、ドリームワークス・アニメーションのスーパーヒーローアクションコメディ映画『メガマインド』の制作に携わった2006年以来、Houdiniを使い続けている。

「Houdiniを使用する以前は、コマンドライン駆動のツールを使用してエフェクトの構築を行っていました。」ピーターソン氏は言う。「こうしたコマンドラインツールをつなぎ合わせて、各エフェクトを実行していたのです。そうして出来上がったエフェクトは、コミット後に変更することができなかったため、修正や変更に多くの時間を費やしました。」

「今ではHoudiniのおかげで、小さな要素をプロシージャルに繋ぎ合わせ、思考の順で作業を進めることのできるツールを手にすることができました。このプロセスにより、エフェクトに微調整を加え、またどんなショットにでも同じエフェクトを施すことが可能です。一度開発されたプロセスはその後も有効性を保ち、いつでも各部を編集して前提データに変更を加えることができます。その結果、プロセスのアプローチを変更して、別のエフェクトの制作に繰り返し簡単に再利用できるのです。」

『ヒックとドラゴン-2』では、Houdiniがドリームワークス・アニメーションのパイプラインに密接に統合され、多くのVFXショットにおいて、流体や炎、氷のシミュレーションを生成するうえで重要な役割を果たした。アーティストが自らのクリエイティブなアイディアをサポートするツールを作り出し、それを制作現場全体で簡単に共有できることは、Houdiniのプロシージャル手法の大きなメリットだ。

この記事の画像とビデオクリップのすべては、ドリームワークス・アニメーションに帰属します。